FRBのタカ派スタンスやオミクロンの感染拡大への懸念が続くなか、17日はこれまで弱かったテック株はやや下げ止まりの兆しがみえたものの、ダウ平均が大きく下げ、相場の調整色が日増しに強まっています。
そうした中、先週、インテュイット(INTU)に新規投資しました。中小企業や家計に豊かさを提供するという同社の経営利益、目標に惹かれました。コロナ禍では大手企業がより強くなる傾向にあり、中小企業の経営は苦しさを増していると推察されます。そのような企業を、税還付ソフトを皮切りに様々なマーケティングや財務管理ソフトを提供することでエコシステムを築きながら、サポートすることに大きな事業機会が今後もあると考えました(以下、資料は全て2021年9月のインベスタープレゼンです)。
高バリュエーション銘柄のリスクが高まっている最近相場下であり、直近のアドビの決算で業績減速感が鮮明になるなど、ソフトウェアには逆風が強まっています。INTUも例外ではありませんが、主力の税金還付はそれほど変動や特需の影響を受けにくく安定感があること、中小企業や個人事業主にとってなくてはならないマーケティング、財務管理ソフトを提供し、また個人に対する金融リテラシーの向上に寄与する事業モデルは、株価の底堅さにつながるだろうと考えています。
税金還付用ソフトで最大手
INTUは「Turbo Tax」という税金還付ソフトの大手で、この分野では最大手とされます。過去10年間のアメリカにおける税金還付のシェアをみると、QUICK Bookは年率平均5.3%増加し、FY2021(2021年11月期)で約31%のシェアがあります。毎年年初の税金還付というリカーリングなビジネス機会があり、長期的に同社は年間8-12%の増収を想定しています。現在、同社のサービスを使って確定申告をしているのは約5,600万人です(アメリカの申告者合計は1.65億人)。ライブ動画・面談で税金還付の方法を教えてくれる、「Turbo Tax Live」と呼ばれるサービスもあり、好調のようです。
TAM:640→ 2600億ドル Mailchimpで中小企業顧客のマーケティングをサポート
同社はTurbo Taxで中小企業や個人事業主との長期的な関係を築き、そこから経営全般のサポートに至る様々なソフトやサービスを提供し、エコシステムを拡充しています。2025年の目標は中小企業の成功率が業界を10pt上回ること、家計の貯蓄率を倍以上に増やすこと、などです。
その1つはが、最近傘下に収めたMailChimpです。これはウェブサイトの構築やeコマース機能の搭載、顧客獲得のためのメーリングリストの作成など、マーケティングを支援するツール(いわゆるCRM)です。MailchimpによってBlcakFridayとCyberMondayに発信されたメールは60億通、220万ものマーケティングがじどうかされ、メーリングリストは2020年に2.31億人の登録者数を集めました。
現在、Maichimpのユーザーは1,300万、月次アクティブユーザーは240万です。会社は長期的に10-15%の年率売上高成長を見込んでいます。
会社は、現在のコア事業は年間640億ドル規模で、中小企業、自営業者、消費者を合計した顧客数は約1.02億人とみています。Turbo Taxや後述するCredit Karmaなどでエコシステムを築くことで、対象市場規模は2300億ドルと想定し、さらにMailchimpは300億ドル押上、2600億ドルの市場機会があるとみています。
Credit Karma: 個人の金融リテラシー向上を目的としたサービス
Credit Karmaは消費者に対する金融知識や金融サービスを紹介するサービスです。消費者の金融リテラシーをあげることで、貯蓄率や資産の向上につなげることを目指しています。例えば、クレジットんカードの負債借り入れの返済スケジュールを構築したり、FICOスコアをあげるためのアドバイスなどを提供しています。月次アクティブユーザー数は4,100万人で、年率平均20-25%成長を見込んでいます。
顧客当たりの平均収入は増加、今期も2桁%台の成長を見込む
このようなクロスセル的な戦略、エコシステムを形成することで、全ての製品の2021年度の顧客当たり平均収入が2020年度を上回りました。2022年度は売上高が前期比15-16%増、中小企業および自営業者向けは12-14%増、消費者10-11%増、Credit Karmaは18-21%増を見込んでいます。調整後EPSは13-16%増、1株当たり配当は15%増をみています。
リスク: シナジー創出やグローバル展開
MailchimpやCredit Karmaなど、買収によってフロントオフィス的なサービスの拡大を強化しているため、買収した事業がきちんとシナジーを挙げられるかが大きなリスクの1つと言えるでしょう。
会社もこの点はしっかりと意識しているようで、Mailchimpと、給与支払いや人材・会計管理ソフトのQuickBooksが連携していることについて説明しています。また、1.21億人のCredit Karma会員は、税務関係のデータにおいて利用者の拡大が見られていると説明しており、Turbo Taxとの相性の良さを1つ注目しているようです。
もう1つのリスクは、アメリカ国外です。アメリカ内ではかなり強固なポジションを築きましたが、アメリカ国外ではまだ圧倒的な地位には至っていません。カナダ、英国、オーストラリア、フランス、ブラジルなどで事業展開をしており、今後の進展に注目したいと思います。