VMC

アメリカのインフラ拡大が追い風のVMC

アメリカでは超党派議員によるインフラ投資法案の議論が水面下で進行しています。インフラ投資の恩恵を受け得る銘柄として、先日記載したハネウェルインターナショナル(HON)のほか、建機レンタルのユナイテッドレンタルズ(URI)、工事受託会社のジェイコブズ・エンジニアリング(J)、骨材やセメントのバルカンマテリアルズ(VMC)などがあります。今回はVMCについて簡単に触れたいと思います。

60年以上にわたり骨材を提供

VMCは60年以上にわたり骨材(セメントを作るために混ぜる砂や砂利)を提供しています。事業エリアは主に米国南部で、約25州(下の画像の青色部分)に提供しています。用途の45-55%が公共工事向け(高速鉄道や橋なおd)、残りは民間向けです。

価格が長期的に上昇中

こちらのグラフにある通り、価格が緩やかに長期上昇トレンドにあります。これはインフレの影響のほか、アメリカが年間1%弱の人口が増えるなど長期拡大が期待できる国であるほか、企業は骨材を提供する州で強固なシェアを有するため、価格決定力が高いことに由来します。

需要は金融危機前の水準を下回っていますが、金融危機前は過剰な住宅投資などの影響でかなり嵩上げされていたため、現在は節度を持った受容環境にあるといえます。最近はデータセンターやアマゾンなどの物流施設の設置が加速しており、そうした施設向けの骨材需要も拡大しています。

骨材は基本的に、その州毎に、建物などを作る現場の近くに骨材採掘場を構えます。そうでないと運搬などの輸送費が割高になるためです。そのため、その州で昔から骨材を提供している会社の競争力が高く、ある意味、参入障壁が高い事業でもあります。単なる砂や砂利でありますが、地域性や規模のメリットが成り立ちやすいため、老舗の企業が長期的な競争力を発揮しやすく、こうした事情も価格の長期上昇をもたらしているといえます。

南部はアメリカの人口成長が特に期待される

はっきり言って骨材は単なる砂や砂利であり、その商品自体に差別化力はありません。各社は効率的な採掘や輸送、規模のメリットを生かしたコストダウン、価格維持&値上げ力などで収益性を高めて行く必要があります。

しかし、長期的に拡大が期待できる明確なドライバーがあります。アメリカの人口拡大に加えて、今後はミレニアル世代が本格的な住宅購入を迎えることで、持続的な成長が期待されやすいことです。加えて、VMCが提供する南部は、2030年までに全米と比べた人口成長力が特に高い見通しとなっており、VMCに「地の利」があるといえます。

目先のインフラ建設で注目されるのは住宅(ミレニアル世代が世帯形成で購入)に加え、高速道路です。以下のチャートにあるようにテキサスなど南部の州ではローカル自治体が予算計上に積極的な様子が伺え、今後の高速道路建設や補修需要の増加が見込まれそうです。

M&Aによるシェア拡大が可能

VMCによると、アメリカの骨材業界は5000以上のプレーヤーが存在するとのことです。上述の通り、規模のメリットが成り立ちやすいことから、中小企業を買収することで地道な成長が期待されます。同業にはマーチンマリエッタ(MLM)などがいますが、それぞれ地域でシェアを分かち合っていることから、過剰な競争に陥る心配は当面なさそうです。つまり、アメリカのインフラ市場の拡大をそれぞれの市場が恩恵を受けやすいといえます。

景気敏感色はあるが長期目線で注目

こうした要素を踏まえ、VMCは長期的に骨材の需要や利益の増加余地があると見込んでいます。足元の米国株式市場ではインフレ懸念の後退、テーパリングや利上げの前倒し観測により、今年に一時最高値を更新したVMCを含む景気敏感株が軟調な展開となっており、アメリカのインフラ需要は局面でアップダウンが見込まれるなど景気循環性が強いところではありますが、長期的に拡大が見込まれる分野であるため、VMCに引き続き注目していきたいと思います。

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