P&Gが7月30日に4-6月期決算とともに示した2022年6月期見通しは安心感を与えるものでした。
買収や為替影響を除いた既存事業売上高は前期比2-4%増と、レンジ中央値は市場予想並みでした。
一部の生活必需品企業は、巣篭もりなどコロナ特需の逆風が懸念されていますが、P&Gは化粧品のSK IIなど、外出恩恵の事業や外出巣篭もり問わず利用される事業があるため、バランスのとれた事業構成がサポートになりそうです。
SK IIを含む美容部門(税引前利益は全社の25%を構成)は4-6月の既存事業売上高が前年同期比6%増で、市場予想はやや下回りましたが、うち価格効果が4%のプラスと寄与しました。
伸び率が最も高かったのはヘルスケア(11%を構成の14%増)でした。オーラルケアやパーソナルケア製品が伸びました。
一方、最大の利益セグメントのファブリック&ホームケア(36%構成)は2%増に留まりました。ファブリーズなどを含む部門ですが、新興国が堅調な反面、北米や西欧が低調でした。感染状況の違いが現れているようです。
警戒材料はコスト増です。粗利益率が前年同期比で1.2%pt低下の48.3%でしたが、原材料コスト増が1.4%pt、輸送コスト増が0.8%pt、販売構成比率が2.1%pt押し下げました。生産性向上や価格上昇が一部を相殺しましたが、全体として利益率は低下しました。
目先は前回決算で示したように、9月頃に値上げを行い収益性を改善しにいく予定です。販売量に逆風にもなりえますが、コスト増は少しずつ落ち着きをみせるとみられます。
今後6ヶ月程度が業績の前年同期比で厳しくなりそうですが、会社は下期(1-6月期)が上期(7-12月期)と比べて業績がかなり堅調になると予想しています。
こうした値上げやコスト増が見込まれながらも、全社の既存事業売上高のプラス成長見込みを示したことは、安心感といえます。
市場コンセンサスでは、今期予想EPSは前期比約10%増の5.63ドル、PERは25.2倍(8月2日終値141.88ドル)、PEGは2.5倍。来期予想EPSは5%増の5.93ドル。目標株価平均は147.78ドルです。