アメリカや欧州の一部で経済再開需要が強まっており、夏の旅行シーズンで航空機需要の高まりも期待されます。そうした旅行需要を取り込める1社としてハネウェルインターナショナル(HON)に注目しています。
HONは主に、航空機、防衛機器、商業ビル、物流システム(eコマースなど)から恩恵を受ける事業を展開しており、それぞれバランスの良い事業構成となっています。
2021年1-3月期決算は売上高が前年同期とほぼ変わらずの84.54億ドル、調整後EPSは同13%減の1.92ドルでした。Aerospace(航空機部品やアフターマーケット、防衛機器)の売上高が同22%減の26.32億ドル、Honeywell Building Technologiesが同6%増の13.58億ドル、Performance Materials and Technologiesが同2%減の23.46億ドル、Safety and Productivity Solutionsは同49%増の21.18億ドルでした。
最大セグメントのAerospaceは民間航空機の飛行時間の減少で大幅減収が続いていますが、COVID-19の感染防止用の個人防護具(マスクなど)や物流システム(eコマース向けなど)が好調でSafety and Productivigy Solutionsが支えています。
世界が徐々に経済再開モードに転じることで、今後は足を引っ張っていたAerospace部門の戻りが期待できます。Aerospace部門は航空機用部品が同37%減収、航空機アフターマーケットが同34%減収ですが、うちビジネスジェット向けは戻りが早まっているようです。感染を避け、従来、ファーストクラスに乗っていた顧客がプライベートジェットを利用する傾向にあるようです。
最近はボーイングの737など受注再開の動きが強まっていることから、ハネウェルの航空機ビジネスも復調が期待されます。Aerospaceは、センサーなどのコントロールシステム、無線通信、電源システム、エンジンコントロール、飛行安全システム、ナビゲーションハードウェア、レーダーや計測システム、宇宙や衛星向け部品、航空機の車輪やブレーキなど幅広く展開しているため、航空機などの生産や保守・メンテ需要の増大に従い、こうした部品売上などが増えることになります。
同社の強みの1つは、「Honeywell Forge」と呼ばれる、ソフトウェア・サービスシステムを展開していることです。例えば航空機の燃料利用度などを計測しながら、より効率的な運航ルートや運航プロセスを提案します。航空機以外の様々な産業にも利用が可能で、同社HPによると、生産効率を20-40%高め、原油などの採掘を20-30%最適化し、リモートオペレーションを90%以上に高め、2030年までにネットカーボン(二酸化炭素)使用量を25%減らせるようです。
その他には、量子コンピュータを自社開発しています。同社は世界で最も計算能力の高いコンピュータを実現しているようで、最近は同事業のスピンオフ(Cambridge Quantum Computingと合弁会社を設立)を発表しています(過半数の株式を取得)。量子コンピュータはまだどのような分野で従来のコンピュータを上回る計算ができるのか模索段階でありますが、高速計算が実現できる分野がみつかれば、前述の航空機のように、気象条件などを解析してより安全で効率性の高い飛行ルートを算出したり、より生産性の高い資源掘削の仕方を提案したりできるようになるかもしれず、ハネウェルの様々な産業向けビジネスに追い風になる可能性が期待されます。