先週、銀行株は怒涛の1週間でした。
保有するシグネチャー・バンク(SBNY)もSVBに続いて破綻し、富裕層向け銀行のファースト・リパブリック・バンク(FRC)も同様の危機下にあります。
希望を持ちたいところですが、上場廃止を覚悟しています。
シグネチャーの投資額は10万円ほどでしたが、ファースト・リパブリックは30万円ほど投資し、昨年は2倍ほどに値上げしていました。
株価急落は残念ですが、私としては富裕層向けに安定的な収益を期待できるビジネスモデルを評価していたので、今回の件は割り切って保有し続けています(元々、全ての米国株は永久保有するつもりで投資しています)。配当は一時停止されました。上場廃止になるとこの先永久に受領できないので、それだけはなんとか避けて欲しいところですが、上場廃止は既に覚悟しています。
FRC株を巡る直近の状況を簡単に整理してみました。
米銀大手からの預金支援も、株価は33%安
17日の株価は33%安と急落しました。米銀大手から300億ドルの預金を少なくとも120日間、受領できるとの観測から16日の日中は大きく上昇していましたが、発表後の時間外取引で急落に転じました(そして17日の急落に至る)。
リリース文では、預金以上に借入金の急増が明らかになり、「資金繰り(預金流出)が思った以上に厳しい」との見方から売られたと私は捉えています。また、提供される預金も、マーケットレートなので、かなりコストの高いものかもしれません。
3月15日時点でFRCは約340億ドルのキャッシュを保有していますが、今回の300億ドルの預金が加わると640億ドルとなります。2022年12月末の預金額は1,764億ドルでした。預金残高がいくらなのかはわかりませんが、急ピッチで資金調達を行なっていることから、かなり流出したようです。FRCはこれに関して、「日次ベースの預金流出額はかなり減速した」とポジティブなコメントも発しています。
借入金が約1,000億ドル急増 借入金利は3倍
しかし、3月10~15日で米連邦準備制度からの借入金が200億ドルから1,090億ドルに増加しました。オーバーナイト金利はFFレートの4.75%です。2022年10-12月期の同行の金利負担債務(1,181億ドル)の平均支払い金利は1.76%(前年同期は0.21%)でしたので、調達コストの急増につながります。また、米連邦住宅貸付銀行(FHLB)からの借入金も100億ドル増えました。こちらの金利は5.09%です。
つまり、わずか1週間弱で1,000億ドル近い借り入れを5%近い金利で行ったということです。言うまでもなく、それくらいの調達をしないと、破綻するということです。1,000億ドル調達したのであれば、(残高はわかりませんが)預金流出の多くを賄えそうな気はします。仮に、資金繰りの危機はしのげたとしても、ROEやEPSは急減少・低下し、株価価値が著しく毀損されることは間違いありません(既にそれを反映する急落を演じています)。
増資観測で時間外取引さらに15%安 身売りの可能性も
しかし、これでもまだ資金調達が十分ではなさそうです。17日の引け後には、NYタイムズがFRCの増資観測を報じました。他の銀行やプライベートエクイティ投資会社から資金を調達するため協議している、との観測ですが、完全な身売りの可能性もあるといいます。これを受けて17日の時間外取引で株価は、終値比15.3%安の19.50ドルで終えました。
また、17日の夜には、格付け会社のムーディーズがFRCの債務格付をジャンク(投資不適格)級に引き下げました。300億ドルの預金救済策に関して、中核的な収益性に今後数四半期にわたって大きな悪影響を及ぼす公算が大きいとしています。
バフェット氏が急浮上 しばらくは景気敏感株に厳しい地合い
FRCの話はここまでにして、18日には著名投資家のウォーレン・バフェット氏がバイデン政権の好感と接触していることが、関係筋の話として報じられました。バフェット氏が米地銀セクターに何らかの方法で投資する可能性が1つの方向として議論されているようです。
FRBや米政府は、インフレ再燃を避けるために必要以上の救済策を実行できない板挟み状態にあると考えられます。バフェット氏や米銀大手など、巨額の資金を有するプレーヤーに介在・協力を求めることは、自然な流れと言え、2008~2009年の金融危機時を彷彿とさせます。
今回の銀行危機がいつ底を打つのかはわかりませんが、危機を抜けたとしても、米経済や銀行業界にかなりのしこりや悪影響が残りそうです。FRBなどの当局がこれまで網からもれていた中堅銀行を管理下におくことは必至で、将来的には再編もあるでしょう。
体力に加え、(規制によって)経営の自由度を失われた地銀や中堅銀行は十分な貸し出しを企業などに行えず、景気減速の遠因になりそうです。
私の保有株では、ユナイテッド・レンタル図(URI)やプラグ・パワー(PLUG)、ジェイコブズ(J)、朱ルンベルジュ(SLB)など、インフラや建機レンタル、工事関連、エネルギー掘削サービスなど、いずれも銀行融資を必要としたり、資金繰りが重要なビジネスを手がける銘柄の株価が直近で急落しています(一方で、金利低下でGAFAMなどハイテク関連は消去法的な選択から株価は堅調です)。
今週はFOMCですが、しばらくは景気敏感株に厳しい地合いになりそうです。