半導体設計ソフトのケイデンス・デザイン・システムズが、24日の引け後に好決算と通期上方修正を発表しました。
25日の株価は下落してはじまっていますが、今期見通しは3四半期連続で上方修正するなど、暗いニュースが続く半導体業界の中で好調さが際立っており、今後も注目に値する企業だと考えています。
3四半期連続で通期見通しを上方修正
2022年3Q(7-9月期)の売上高は前年同期比20%増の9億ドル、調整後EPSは33%増の1.06ドルとなり、市場予想の8.7ドル、0.97ドルを大きく上回りました。
2022年度通期見通しは、売上高を従来予想の34.70億~35.10億ドルから35.32億~35.52億ドル、調整後EPSは4.06~4.12ドルから4.20~4.24ドルへと、レンジ上限も引き上げました。
多様な半導体の設計効率化に欠かせないEDA(電子設計自動化)ソフト
半導体の需要は落ち込みが見込まれていますが、高性能・高効率の半導体の設計需要は旺盛なようで、CDNSの業績の追い風になっています。
半導体は自動車やスマートフォン、PC、家電、5G通信、その他産業用、IoTなど、様々な用途に用いられており、それぞれの半導体で求められる仕様も様々です。そうした多様な種類の半導体を効率的に設計するために、EDAと呼ばれる電子設計自動化ソフトが欠かせません。
同社は売上高セグメントが、カスタムICデザイン/シミュレーション、デジタルICデザイン/サインオフ、機能検証、知的財産、システムデザイン/分析の5つに分かれています。設計から検証まで、全てを行うことができるプラットフォームを提供しています。
売上高の45%は米州、次いで大きいのが中国の17%のため、米国が中国の設計ソフト利用を制限することでCDNSの業績の逆風になりかねませんが、このEDAは同社とシノプシス、そしてドイツの企業の大手3社で寡占しているため、中国企業などにシェアを大きく奪われるリスクは低そうです。
3Qは大型契約や他社からシェア奪取
半導体の生産は台湾や中国が存在感を示していますが、設計力については依然として米国が優位です。アップルやエヌビディアなどが自社で半導体を設計していますが、その設計においてCDNSのソフトウェアやサービスを利用しています。
同社は3Qでは、米国の大手半導体メーカーと大型の契約を締結したほか、5G向けなどで需要が拡大したとの音です。また、AIやハイパスケーラー顧客からも受注を再度獲得しています。また、競合企業からシェアを奪っており、業績モメンタムは好調です。今夏にかけて株価は最高値を更新する場面がありました。
クラウドシフトでより強固な事業モデルを構築
好調が続く中で、クラウドへのシフトも注目されます。同社は昨年、「Cerebrus」という名称でクラウドでの設計プラットフォームを提供しています。機械学習機能を搭載することで円滑な設計が可能となり、パワー(消費電力)、パフォーマンス、エリアを20%向上、手作業によるアプローチと比べて設計生産性を最大10倍向上できるとしています。
クラウドの利点は、いつでもどこでも設計環境を再現できるため、工場移転や拡張でも真価を発揮しそうです。例えば、米国に半導体開発・生産施設を移転させる場合にも、クラウド環境であれば円滑に移転ができそうです。
同社はソフトウェアのため、売上高の80%以上がリカーリング(継続収入)となっており、半導体の需要の急減に対して業績は耐性を示すことにつながっているようです。