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「App Store」裁判、アップルへの悪影響は限定的と見る理由

8月下旬から9月初めにかけて、アップルのアプリ配信サービス「App Store」の方針変更が明らかになり、10日は米連邦地裁がエピックとの裁判を受けてアップルに課金見直し命令を出しました。

この命令を受けて10日のアップル株は3%下げていますが、アップルのアプリ事業を根本的に揺るがす事態にはならないと考えています。

アップルのアプリ事業が含まれるサービス収入は、全社売上高の約20%を占めています。米調査会社のループ・ベンチャーズによると、アプリ関連売上高はサービス収入の約3分の1、つまり全社売上高の7%程度と推定しています。サービス事業にはApple CareやApple Musicなどが含まれ、「App Store」以外の収益源も多いです。

ループでは、アプリおよびサービス関連事業の利益率は全社あるいはハードウェアよりも高いことから、アプリ関連の利益は全社の14%程度を想定しているようです。

このアプリ事業が全て無くなればアップルのEPSには10%以上のマイナス影響が生じることになりますが、今回の判決は成長が止まることを意味しません。アップルは裁判資料で、アプリ売上の約70%以上がゲーム関連であり、さらにそのうちの70%がヘビーユーザー(「App Store」利用者数の10%未満)によって牽引されていることを明らかにしています。

つまり、ほとんどのユーザーは「あまりお金を払っていない」ということです。私もゲームアプリは利用しますが、「無課金」ユーザーです(笑)。こうしたことを背景に、米地裁は今回の判決で、アップルが独占的とは認めておらず、現在の事業の成功は違反ではないとしています。

これは、敗訴とは言えない結果です。エピックにとってみれば、勝者になれませんでした。アップルは「App Store」内にゲーム開発業者が自社のウェブサイトのリンクを入れることなどを許容する方向に舵を切っていくと思いますが、その程度の変更(譲歩)で「済んだ」ということになります。

もちろん、アップルが「儲けすぎ」と考えるゲーム開発企業は多いと思われ、今後も批判が続くでしょう。アップルがさらなる譲歩を行わなければならない展開になる可能性も想定されますが、収益への影響は限られると思います。

そう考える一番の理由は、「App Store」内での課金がユーザーにとって「便利」で「安全」だからです。ゲームアプリを購入する時やゲーム内課金を行うときは、私の場合はiPhoneの顔認証機能でものの1分もかからずに支払い(私は無課金ユーザーなのでアプリの無料ダウンロードが大半です)ができます。

これがアプリ外支払いとなれば、ユーザーは面倒に感じるでしょう。例えば「ファイナルファンタジー」シリーズのゲームを購入するときに、ユーザーは「App Store」で有料購入しようとしますが、スクエニのHPに移行して、そこで支払い手続きを行う必要があります。クレジットカードなど、何らかの情報入力が必要になり、時間を取られます。もちろん、スクエニのHPで入力するクレジットカード番号も、iPhoneの顔認証で認証することはできるのである程度の手間は省けますが、「App Store」と比べると余計な時間がかかります。

ユーザーが「App Store」の中か外の支払い、どちらを選ぶかは、「価格」に委ねられるでしょう。つまり、「App Store」外で支払っても、金額が「App Store」内と変わらないのであれば、ユーザーは間違いなく、1分未満で支払いが終わる「App Store」内での支払いを選択すると思います。

ゲームアプリ業者が、自身のHPなどでユーザに支払いを行ってもらい、アップルにこれまで取られていた15−30%の手数料率を回避するためには、ゲームアプリの「値下げ」が必要でしょう。「App Store」課金で300円のアイテムであれば、自社HPで支払う場合は250円にする、などです(「App Store」の手数料率を避けられることを原資にする)。

このような「値下げ」ができれば、ゲームアプリ業者との間で直接支払いを完了するユーザーは増えるでしょう。ただし、その「手間」を感じて、そのような直接支払いを希望するユーザーがどこまで増えるかは不明です。10%の値下げでは不十分で、20−30%値下げする必要があるのではないでしょうか。そうした判断が、果たしてゲームアプリ会社にできるかどうか。値下げをしてユーザーがこれまで以上に増えればOKですが、手間と感じてあまりユーザーが増えない可能性もあります。結果的に、自社HPにユーザーを誘導するよりも「App Store」で支払いができるようにしておいた方が、ユーザーの利便性にポジティブとなり、集客率が高いまる、という展開も想定されます。

ユーザーが「App Store」内にとどまるか、ゲームアプリ会社との間で直接支払いをするかは、ゲームアプリ会社の価格戦略に委ねられる部分が大きい、ということになります。アップルとしては、ゲームアプリ会社が自社のHPに誘導できるオプションを組み込むことで、「手数料率を大きく下げる」ことは回避できると思われます(今回、独占禁止認定がされなかったため)。

アップルにとっての最悪シナリオは、手数料率を5%とか10%とかに一律に下げられてしまうリスクでしたが、杞憂になりそうです。スマートフォンのゲームを主とするアプリ人気は今後も続くと思いますし、アップルのアプリ配信システム自体が否定されたわけではありません。

アプリ開発業者と直接やりとりするユーザーがある程度増えることで、アップルのEPSには2−3%程度の逆風が生じるとは思いますが、今後もユーザ数自体が伸びることで、1−2年すればアプリ関連事業の成長率は巡航速度に回復するでしょう。アップル株がさらに下がることになれば、魅力的な投資チャンスになると考えています。

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